1980年代に入ると、地上を走る都電も荒川線を残すのみとなり、地下鉄が担う役割はますます大きくなっていきます。

大幅に工事が遅れていた有楽町線、半蔵門線も完成に向かい、地下鉄のネットワークは密度が濃くなり、ますます利便性が高まりました。
半蔵門線の九段地区での環境悪化を理由にした住民の「一坪反対運動」は話し合いによる解決には至りませんでしたが、当時最新の泥水加圧式シールド工法を採用し、地上部へ影響を及ぼすことがないよう技術的にも努力しました。
延長1㎞のトンネル工事は7年10カ月を要して完成しました。

この工法は、1980(昭和55)年に有楽町線の氷川台付近で世界に先駆けて行われた大断面泥水式シールド工事が始まりです。大がかりな設備が必要ですが、切羽が無人のため安全面での問題が少なく、補助工法の必要がないため経済的にも優れ、さらに地上への影響も少ない画期的な工法で、以降の地下鉄建設に大きく貢献しました。

こうして地下鉄工事は人々の努力と叡智によって、徐々に完成に向かっていきます。

1990年代に入り開業した南北線は、ホーム上での安全・安心を図るホームドアを地下鉄で初めて採用しました。
南北線は1962(昭和37)年には建設計画があったにもかかわらず、車庫用地の問題や、新宿、渋谷、池袋などのターミナル駅を通過する路線が優先されたことにより、工事が大幅に遅れていました。1991(平成3)年の駒込~赤羽岩淵間の開業時は他の地下鉄路線との連絡のない独立した路線でしたが、徐々に開業区間を伸ばし、都心部を南北に貫き連絡する路線も増えていき利便性が高まりました。
また、同年は営団地下鉄創立50周年という大きな節目の年でもありました。

そのような状況のなかで、有楽町線、半蔵門線、南北線の完成を目指していく営団でしたが、折からの地価高騰で、土地取得では苦労の連続でした。

南北線の延伸工事も順調な進捗を見せるなか、1994(平成6)年に有楽町線の小竹向原~新線池袋(現:池袋)間が開通。
1999(平成11)年には池袋~渋谷間(現:副都心線)の事業免許を取得、最後の新線建設を始めました。

2003(平成15)年には水天宮前~押上間が開通し、着工から30年以上経った半蔵門線がついに全線開通。結果として営団最後の新規開業区間となります。

2008(平成20)年に副都心線が無事全区間で開業し、地下鉄ネットワークが完成しました。そして、2013(平成25)年、渋谷での東急東横線・横浜高速鉄道みなとみらい線との相互直通運転が開始されました。
それを機に、銀座線渋谷駅の移設など、渋谷駅の機能更新と再編、駅ビルの再開発などと一体になった都市基盤施設の整備が行われています。すべての完成は2021(平成33)年を予定しています。